暮らしの庭づくり

6つのコンセプト

一、家と庭は一体である

家と庭とは、一体化された一つの住まい空間であるべきだと考えます。そして、その庭空間を暮らしの一部屋(アウトリビング)と称するが如く、その部屋の使い方の良し悪し一つで、暮らしの豊かさを大きく左右するものだと考えます。また、住まい(暮らし)を計画する時は、建物の設計師と庭師、お施主様とが三竦み一体となり、一つの住まい空間として計画することが理想だと考えます。

 
二、自然に囲まれた暮らし​

雑然とした日々の暮らしの中で、唯一何もせず、人の心を癒し、緊張を解きほぐし、深いやすらぎや感動を与えてくれるのは、美しい自然の森や林の風景、そして人と自然とが共存しあう里山の風景ではないでしょうか。これらを踏まえ、あらゆる事に制限された日々の暮らしの中で、移り変わる四季の変化と、自然の美しさや心地よさ、そして人と自然との調和感を身近に実感できるような住まい空間を研究し続けていきたいと考えています。

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三、心和む自然素材​

暮らしの中や庭空間に使われる素材は、できるかぎり自然のものが理想だと考えます。特に時間と共に汚れや色あせが気になる新建材に比べ、石材や土が原料のレンガといった自然素材の方が、年月を重ねるごとにより風合いが増し、より安らぎや安心感を与えてくれるものだと考えるからです。また、家と庭との暮らしの架け橋にもなるデッキやテラス、外部の目線を遮る部分の壁などにも、木の温もりや天然の味わいを感じる、自然素材のものをお勧めしています。そして目に触れない部分、柱や基礎部分には新建材を用いるなど、耐久性の維持を心掛けています。

 
四、暮らしの中から生み出される美​

美しい庭を造るのは理想です。しかし、斬新さや美しさ、面白さだけを求め、庭を造るのではなく、人の暮らしと住まい空間とが親密な関係で繋がっていると実感できる―、すなわち機能性も含め、暮らしの豊かさや快適さを実感することができる〈暮らしの庭造り〉を目指します。そしてその暮らしの中から、自然に生み出される健全な美―、「暮らしの美」を追及していく事が理想だと考えます。

 
五、庭との暮らしを大きく左右するメンテナンス

庭との暮らしを計画していく上で、もっとも重要な要素の一つに「メンテナンス」が挙げられます。特にウッドデッキなどは風雨にも晒されますし、庭には自然の生き物でもある植物を取り入れることが多いので、いくら良い庭を造ってもメンテナンスなしでは快適な暮らしを続けることは困難です。また庭には完成がなく、暮らしと共に日々成長し変化し続けていくものなので、それを補助しながら庭造りをしていくことが、快適で豊かな暮らしを長く続けていく、とても重要な要素だと考えます。ですから私は常に、庭のデザインとメンテナンスを一体として計画することを心掛けています。

 
六、街並みや環境に配慮した住まい空間​

住まい空間づくりにおいて、私が欠かせたくないと考える要素はもう一つあります。それは、周囲の街並みや環境に対するできるかぎりの配慮です。その土地で暮らしていく上で、より快適でより豊かな住まい環境であると誇りに思えるような「美しい街並み」へと発展していくための、とても重要な事だと考えているからです。

ですから私はこれからも、人の暮らしや文化、異国の文化も含め街並みや環境といったあらゆる角度から、住まい空間を追及し、快適で豊かで永く愛される <暮らしの庭造り> を目指し、提案を続けていきたいと考えています。